第9回 ノート展 キャラクター部門結果発表

第9回ノート展キャラクター部門の審査員は、株式会社れもんらいふ代表のアートディレクター千原徹也氏。「描き手の人となりや人間性が伝わってくるキャラクターに魅力を感じる」という千原氏が今回注目したキャラクターとは? 審査の様子をレポートする。

【大賞】マスダカルシ

*作品講評*
いわおじさんという今までにない斬新なキャラクターに惹かれました。新聞紙を使っているという点も非常に良いですね。新聞の文字がうっすらと透けて見えるところに表情の奥行きを感じます。どことなく悲しい過去を持っていそうな「陰」の部分も魅力。ダイヤモンロー、アメジスジィーさんといったほかのキャラクターも味がありますし、このシリーズで絵本やアニメがすぐにできそうな気がします。いろんな石のキャラクターをぜひ生み出して欲しい。これからイラストノートに登場してくれるのが楽しみです。(千原)

【準大賞】ミチタカ

*作品講評*
アイデアがとても良いので、大賞まであと一歩!という感じでした。ティッシュの箱、スリッパ、空き缶というアイテムがあることでスライディングするねこなんだなってことがわかるので、それを想像するだけで可愛い。A BATHING APEのようにキャラクターが立ったファッションブランドとしても成立する気がしますね。猫が悲しそうな顔をしていたり、必死な顔をしていたり、もう一歩何かあると大賞になっていたと思います。(千原)

【準大賞】長谷川あかり

*作品講評*
なんとも可愛らしいキャラクターで気になる存在でしたね。僕がイラストを描くときに大事にしているのは、「絵」を描こうとするのではなく、グラフィカルに描くことなんです。そうすることで、イラストにタイポグラフィをのせても違和感がないですし、デザインするときに素材の一つとして使いやすい。はるちゃんはそういう意味でも完成度が高いと思います。また、描いた人がはるちゃんのことが大好きなんだろうなってことが伝わってくるので見ていて気持ちがいいです。(千原)

【入選】ザグマのソー

*作品講評*
いくつかキャラクターを描いてくれた中からフモモがとても魅力的に感じました。手も足もなくて、何かを食べるとその能力を手に入れるという設定がいい。パックマンとかにも出てきそうですよね。11歳の今だからこそ思いつくキャラクターだと思いますし、この感性をずっと大切にしてほしいという意味で選びました。掲載されたこのイラストノートもずっと大切に残しておいてください。(千原)

【入選】山川知也

*作品講評*
猫のキャラクターはいくらでもあるけれど、赤い縞模様で歌舞伎化している猫ってはじめてでショッキングです(笑)。うさぎを目指さなくてもそのままでよかったかもしれません。「歌舞伎化した猫」という絵本があるとすれば、シリーズの何作目かでうさぎになるっていう展開があると面白いですね。「なんだか気になる」というのは大事なことなんです。歌舞伎猫はアニメや漫画にもできそうだし、歌舞伎座でグッズを売っても売れるのではないでしょうか。(千原)

【入選】竹内 薫

*作品講評*
仲の良いちょっと「隠」なクマの親子、というシュールな設定、50歳と11歳という年齢差など、ほかにはないオリジナリティを感じました。この二人にどんな物語があるんだろうと想像する面白さがある。親子なのに背丈が一緒という描き方も今までにないですよね。普通親子の設定だと子供を小さく描きがちですが、そこをあえて同じサイズにしていることでキャラクター性が強くなっていると思います。もう少しタッチがグラフィカルになればファッションブランドに使えそうです。(千原)

【入選】でん

*作品講評*
絵が上手な方ですね。ティルタくんと筋タウルスというキャラクターも可愛いですし、いると面白そう。ぬいぐるみなどグッズ展開もすぐできそうです。すでにプロとして活躍されているのだと思いますが、枠の描き方もグラフィカルですし、僕がどうこういうレベルではなく、「入選せざるを得ない上手さ」なんです。ただ、「上手」すぎるというのもクセモノで、ツッコミどころや隙があることでもっと魅力的なキャラクターになる可能性もあります。次のステップに期待しています。(千原)

【入選】前田登志春

*作品講評*
てぶくろの中に入ったキャラクターという、なんだかわけがわからないんだけど、ほっとけない魅力にあふれています。なかなか思いつかないですよね。しかも男の子と女の子でなぜか身体の色がブルー。目も赤いので宇宙人なのかな?アバターのようにも見えますね(笑)。右手と中指をズボンにしてサスペンダーをつけているのもお洒落です。たくさんの作品の中で、スルーできない力を放っていました。(千原)

【編集部賞】さくら

*作品講評*
猫のツンデレ感を想像もつかないキャラクターとして表現している独創的な作品ですね。この自虐的な性格は、現代のネット住民系が持つシニカルな面が表出している現代的な作品と見ることができます。説明文がなくてもキャラクターの仕草や表情で、全てが伝わるともっとよいと思いました。(三嶋)

●審査総評●

全体的には可愛らしいキャラクターが多かった気がします。長く愛されるキャラクターを生み出そうとするとそういう傾向になってくるのかもしれませんが、もっと個性の強いキャラクターも出てきてほしかったですね。そのなかでもアニメや絵本としてストーリー展開ができそうか、ファッションブランドとしてグッズ展開できそうかなど、アートディレクターの視点で選出しました。あとは、自分らしさをどこまで出せているかもポイントでした。キャラクターから描き手の人柄が伝わってくるような作品に魅力を感じます。ヒロ杉山さんのイラストレーション講座で講師をさせてもらっているのですが、先日自分自身のキャラクターを描く課題を出したんです。SNSの時代には、描いたキャラクターが売れるかどうかよりも、作家自身がどれだけ個性の強いキャラクターになれるかが重要になってきます。セルフプロデュースができるクリエイターが出てきてくれることを期待しています。

■審査員PROFILE

千原徹也 氏

株式会社れもんらいふ代表/アートディレクター。1975年京都府生まれ。広告、ブランディング、CDジャケット、装丁、雑誌エディトリアル、映像など、デザインするジャンルはさまざま。H&M GOLDEN PASSキャンペーン、adidas Originals店舗ブランディング、桑田佳祐 「がらくた」、関ジャニ∞ アルバム「ジャム」、吉澤嘉代子MV&ジャケットデザイン、ウンナナクールのクリエティブディレクター。その他にも、アートマガジン「HYPER CHEESE」、「勝手にサザンDAY」企画主催、J-WAVEパーソナリティ、れもんらいふデザイン塾の主催、東京応援ロゴ「KISS,TOKYO」プロジェクトなど、活動は多岐に渡る。
https://lemonlife.jp/

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